「だから、いつか家庭を持って、息子とキャッチボールをする。 ――それが今の俺の夢」
「――うん……うん! すごく素敵!」
俺の話を聞いて、何度も紗羅は頷いた。
きっと、紗羅ならこの気持ちは分かると思う。
同じ片親同士だから。
きっと抱えていた寂しさは一緒なはずだから。
嬉しそうに、そっか! を繰り返す紗羅。
でも、しばらくすると急にこっちを向いて俺の両手をギュッと掴んで目を閉じた。
「どした?」
「ん~? 神様にお願いしてるの」
「え?」
「成也の夢が叶いますようにって」
そう言って、長い睫毛を閉じた紗羅はずっと俺の手を掴んで離さなかった。



