「今もパイロットになりたいの?」

「まさか」

「え~そうなの? だったら今の夢は何?」


好奇心いっぱいの紗羅がズイズイと俺に顔を近づけてくる。

無邪気なその姿に、笑みが零れる。


「パイロットからすると、小さな夢かもしんないけどさ」

「うん!」

「自分の子供とキャッチボールする事が、今の夢かな」

「キャッチボール?」

「そう。俺、父親がいなかっただろ? 母さんがその分愛情を注いでくれたけど、寂しくなかったって言えば嘘になる。子供の時は特にそうだった」


みんなの夏休みの思い出。

父さんとキャンプに行った。

父さんと海に行った。

父さんとキャッチボールをした。


羨ましくて、羨ましくて、寂しかった――。