ゆっくりと俺の前まで辿り着いた紗羅。

近くで見れば見るほど、その綺麗さに目が眩む。


青薔薇の姫。

ライトの光を浴びて、本当の女神のようだった。


海の女神サラキアの名前を持つ紗羅。

海の女王、人魚姫。


いつも一緒にいるのに、今、目の前にいる紗羅がまるで知らない女性に見える。

観客と同じく、俺も魔法にかかってしまったかのように目が離せない。


そんな俺を見て、紗羅は僅かに首を傾げた。

その姿を見てやっと我に返った。


現実に引き戻された俺は、塩谷に言われた通り目の前に現れた女神に、ゆっくりと膝を折って手にキスを落とす。

真っ白な小さな手。

俺を見下ろす紗羅は、温かい瞳で俺を見つめた。


王子が姫に忠誠を誓う。

まるで、何かの映画のワンシーンのようだった。

チュッと唇を離した瞬間、会場は再び爆発したかの様に歓声と拍手の渦に巻き込まれた。


「成也君――っ!!」

「紗羅ちゃん! こっち向いてっ!!」

「すごーいっ!!」


割れんばかりの歓声と飛び交う歓喜の声。

その歓声を聞いて、驚いたように目を大きく見開いた紗羅。

それでも、ゆっくりと立ち上がった俺に、いつもの満面の笑みで微笑んだ。