人魚姫の涙


歓声が止んだ。



さっきまで拍手や歓声が飛び交っていたのに、光の中に紗羅が現れた瞬間、会場はまるで魔法にかかったかのように静まり返った。

見る者をすべて虜にする美貌。

栗色の髪。

透き通る真珠の肌。

そして、サファイアの様な青い瞳。

会場中の人間は、神が造りだした女神の前に完全にひれ伏した瞬間だった。


そんなニッコリ状況に臆することなく、紗羅はニッコリと僅かに微笑んだ。

そして、ステージの真ん中に立ち、じっと俺を見据えた。

そこから観客の方に伸びる道の先に立つ俺。

王子様とお姫様。

まさに、その通りの図だった。


「おいで」


凛とした面持ちで立つ紗羅に、右手を差し出した。

すると、ゆっくりとこちらに向かって歩き出した紗羅。

真っ青な薔薇が紗羅の存在を奇跡だと主張する。

観客は誰一人として、声を発さない。