人魚姫の涙

それからしばらくは放心状態だった。

さっき、女性が座ってた場所をウロウロしてみたけど、手掛かりは一つも無かった。

そして、気が付けばいつの間にか辺りは真っ暗になっていた。


呆然と堤防に佇んで、思考回路を巡らせる。

そして、いつもなら決して辿り着かない思考に辿り着く。


もしかして、さっきのが噂の...人魚姫?

人魚かどうかは定かじゃなかったけど、ものすごい美人だった事は認める。

みんなが言う人魚姫があの女性なら、否定はしない。

だけど、一体彼女は何者で、どこへ消えたっていうんだ。


思い出すのは、夕日に照らされた真っ青な瞳。

そして、セイレーンのような澄み渡った歌声。


「――あぁ! もう! なんなんだよっ!!」


訳が分からずイライラして、大声で海に向かって叫んだ。

意味わかんねぇ!