人魚姫の涙


ステージの後ろは学生スタッフで溢れていた。

でも、紗羅が現れた瞬間、まるでモーセの十戒の様に人が割れた。

みんな魔法にかかったように、動きを止めて歩く紗羅を見つめる。

そして、まるで独り言のように、綺麗。と囁いている。


「塩谷さん、どこにいればいいの~?」

「あ! そこの舞台袖で待っててくれる? 成也くんも」

「わかった。――紗羅、走ると転ぶぞ」

「はーい」


暗闇の中浮かび上がる、光の通路。

大勢の観客。

青い薔薇の姫。



ショーの始まりだ。