人魚姫の涙

言葉を無くして、ただただ見つめ合う。

だけど、何か言わなければと思って、声を上げようとした。

その時――。


ガシャ――ン!!!


突然辺りに大きな音が響き渡って、その場で飛び上がった。

反射的に音のした方を振り向くと、自分の自転車が倒れていた。


「やっべ!」


この前買ったばかりの新品なのに!


慌てて倒れた自転車に駆け寄って、傷が入っていないかを確認する。

そして無傷である事を確認して、急いで再び堤防を覗き込んだ。

それでも。


「あれ――?」


つい先程までそこにいた女性の姿はそこには無かった。

見えるのは、ただ穏やかな海だけ。


え?

今、いたよな?

あそこに座ってたよな?

目を離してから、そんな時間経ってないよな?


えぇ!?
えぇぇぇぇぇぇ?!