人魚姫の涙

「そういえば、紗羅」

「なあに?」

「文化祭って夏休みが明けてからだぞ? その頃には、紗羅もあっちで学校が始まるんじゃね~の?」


この前は流れに流されてしまったけど、よく考えれば文化祭は夏休み明け。

本来なら紗羅はイタリアへ帰っているはずだ。


今まで帰国の事に関しては互いに触れないようにしていたけど、まさかこの事をキッカケに聞く事になるとは思わなかった。

どうしてか紗羅の顔が見れずに、視線を伏せたままご飯を口に運ぶ。

どんな返事が帰ってくるか、内心ドキドキしていた。

そんな俺とは違い、紗羅はニッコリといつものように微笑んだ。


「あ! その事なら大丈夫!」

「え?」

「私、ほとんど単位取っちゃったから、夏休みが明けても、しばらくは授業がないの」

「そんなもんなのか?」

「うん! だから大丈夫」


イタリアの大学のシステムはよく分からないけど、分かったのは紗羅は夏休みが明けても、しばらくは帰らない事。

その事が分かった瞬間、無意識に頬が上がる。

そっか、と小さく呟いたけど、心の中は安堵と嬉しさが広がっていた。