人魚姫の涙

「私やる!! このドレス着る!!」


案の定の言葉が聞こえ天を仰ぐ。

そんな俺を置いて、二人の盛り上がりはピークに達し、ガッシリと手を握り合って顔を寄せた。


「本当ですか!?」

「だって、このドレス着れるんでしょ?」

「おい、紗羅っ!!」

「もちろん、成也も出るんでしょ?」

「いやいや、俺は――」

「安心してください。彼氏さんの衣装もちゃんとあります」

「本当!?」

「騎士をイメージした衣装です。もう間違いなく、お似合いです」


青ざめる俺を、うっとりとした顔で見上げた彼女。

思わず後ずさるが、言葉が落ちない。


っていうか、騎士!?

想像しただけでも恥ずかしいっつーの!


「悪いけど、俺はパス」

「え~!! 成也一緒に出ようよ! 私、成也の騎士姿見てみたい」

「無理」


駄々をこねる紗羅の顔を見て、ビシッと言ってやった。

こればっかりは無理だ。

なんで俺が見世物にならなきゃいけないんだ。

そういうキャラでもないし、恥をかくのが目に見えている。


はぁと大きく溜息を吐いて、全面否定のオーラを出しまくる。

すると、さっきまで瞳を輝かせていた紗羅が、まるで捨てられた子犬のようにシュンとした。


「そっかぁ…...」


口を尖らせて、まるで子供みたいに俯いている。

だけど、そんな姿見せられても今回は無理だ。