人魚姫の涙


「あ...…あの~」


不意に世界の端で遠慮気味な女の人の声がした。

慌てて瞳を開けると、少し離れた所にモジモジと顔を赤くして、チラッとこっちを見るショーットカットの小柄な女の子が立っていた。

その姿に、慌てて抱きしめていた紗羅から距離を取る。

こんな所でキスしている所を見られて、恥ずかしさと後悔が襲う。

その事を悟られないように、努めて冷静に言葉を落とした。


「なに?」

「あ...…えっと」


不自然に固い俺の声を聞いて、その子は怯えたように顔を伏せてしまった。

その姿を不思議そうに眺めていた紗羅は、首を傾げながら、その子の顔を覗き込んだ。


「どうしたの?」

「え...…えっと」


キョトンとした声で、彼女に尋ねた紗羅。

全く動じてない様子だ。

こういう時、紗羅を凄いなと思う。