人魚姫の涙

◇◇


「お疲れ~」

「お~成也、また明日な~」

「お~」


今日の講義が終わって家路につく。

電車で家の最寄駅まで行って、いつもそこから自転車に乗っている。


海沿いにある俺の家。

この時間に海に沈む夕日を見ながら帰るのは密かな楽しみだったりする。


まだ時間も早いし、ちょっと寄り道していくかな。

チラッと時計を見ると、まだ6時すぎ。

なんだか今日は久しぶりに夕日をゆっくり見たかった。


自転車を走らせて、向かったのは昔からよく来る夕日のビューポイント。

そういえば、今日夢に見た場所もあそこだったな。

幼い頃から、あの場所が俺と紗羅の遊び場だった。


海から届く沢山のゴミも、あの頃の俺達にとっては宝物だった。

一日中あそこにいても飽きる事はなく、ずっと貝殻を探したり砂の城を作って遊んでいたのを覚えている。