しばらく待つと、ギィィ、と扉が開く。
ヒョコリ、と顔を少しだけ覗かせた彼女は、
「いらっしゃい雪乃!!急にごめんね〜!!さ、入って入って〜」
と言う。
言われるがまま真っ暗な玄関へと通されると、
どこからか鼻をつくような臭いがした。
リビングへと着くと、彼女は楽しそうに私に話しかける。
「そこのソファー座ってて〜!!あ、お茶入れるね、ちょっと待っててね〜!!」
彼女の声色はいつも通り。
だが、いつまで経っても真っ暗だというのに明かりを着けない彼女は、明らかに普通ではなかった。
しばらくの間、彼女がお茶を運んで来てくれるのを静かに待つ。
すると、カチャカチャと食器同士がぶつかり合う音と彼女の楽しげな足音が近付いてきた。
「ありが_」
お礼を言おうと彼女の方を振り向く。
が、彼女の姿を見て言葉を失った。
先程までは暗闇に目が慣れず気が付かなかったが、
今ははっきりとわかる。
彼女のくるんと巻かれたふわふわした髪は、
白髪とフケで目も当てられない程に乱れている。
服もグシャグシャで、所々に血痕のようなものが付着している。
それに、彼女のか細い腕は肉を抉ったかのような傷が何ヶ所にもあり、そこから溢れ出たであろう血も
茶色く固まり残ったままだった。
私が変わり果てた彼女の姿に唖然としていると、
彼女は机の上に二人分のレモンティーを置いた。
…が、マグカップが割れている。
ヒビが入っている、なんてものではなく
バキバキに、原型がわからない程に破損している。
彼女が淹れたレモンティーも
ほとんどが外に溢れ出していた。
にも関わらず、彼女は平然としている。
むしろ唖然とする私を不思議そうに見つめているくらいだ。
「梨花、これ…」
私が割れたマグカップを指差すと、
彼女はニッコリと笑い
「しばらく会えなかったから寂しかったの〜!!お茶しながらゆっくり話そ〜?」
と言い、割れたマグカップに注がれたレモンティーを口に運んだ。
鋭く尖った破片が彼女の指を刺し、マグカップが赤く染まる。
「梨花、待って、やめて。」
私がそう言い彼女の腕を掴むと、
急にピクリとも動かなくなってしまった。
彼女のマグカップを取り上げて机に置くと、
「何があったの…?」
とだけ尋ねる。
しばらく返事を待ってみたが、
彼女はマグカップを持っていた手の形も変えず、ただひたすら一点を見つめている。
これでは何も進まない。
彼女の役に立てない。
そう考えた私は、彼女を置いて
先程から気になっていた鼻につく生臭い臭いの正体を確かめにリビングを出た。
ヒョコリ、と顔を少しだけ覗かせた彼女は、
「いらっしゃい雪乃!!急にごめんね〜!!さ、入って入って〜」
と言う。
言われるがまま真っ暗な玄関へと通されると、
どこからか鼻をつくような臭いがした。
リビングへと着くと、彼女は楽しそうに私に話しかける。
「そこのソファー座ってて〜!!あ、お茶入れるね、ちょっと待っててね〜!!」
彼女の声色はいつも通り。
だが、いつまで経っても真っ暗だというのに明かりを着けない彼女は、明らかに普通ではなかった。
しばらくの間、彼女がお茶を運んで来てくれるのを静かに待つ。
すると、カチャカチャと食器同士がぶつかり合う音と彼女の楽しげな足音が近付いてきた。
「ありが_」
お礼を言おうと彼女の方を振り向く。
が、彼女の姿を見て言葉を失った。
先程までは暗闇に目が慣れず気が付かなかったが、
今ははっきりとわかる。
彼女のくるんと巻かれたふわふわした髪は、
白髪とフケで目も当てられない程に乱れている。
服もグシャグシャで、所々に血痕のようなものが付着している。
それに、彼女のか細い腕は肉を抉ったかのような傷が何ヶ所にもあり、そこから溢れ出たであろう血も
茶色く固まり残ったままだった。
私が変わり果てた彼女の姿に唖然としていると、
彼女は机の上に二人分のレモンティーを置いた。
…が、マグカップが割れている。
ヒビが入っている、なんてものではなく
バキバキに、原型がわからない程に破損している。
彼女が淹れたレモンティーも
ほとんどが外に溢れ出していた。
にも関わらず、彼女は平然としている。
むしろ唖然とする私を不思議そうに見つめているくらいだ。
「梨花、これ…」
私が割れたマグカップを指差すと、
彼女はニッコリと笑い
「しばらく会えなかったから寂しかったの〜!!お茶しながらゆっくり話そ〜?」
と言い、割れたマグカップに注がれたレモンティーを口に運んだ。
鋭く尖った破片が彼女の指を刺し、マグカップが赤く染まる。
「梨花、待って、やめて。」
私がそう言い彼女の腕を掴むと、
急にピクリとも動かなくなってしまった。
彼女のマグカップを取り上げて机に置くと、
「何があったの…?」
とだけ尋ねる。
しばらく返事を待ってみたが、
彼女はマグカップを持っていた手の形も変えず、ただひたすら一点を見つめている。
これでは何も進まない。
彼女の役に立てない。
そう考えた私は、彼女を置いて
先程から気になっていた鼻につく生臭い臭いの正体を確かめにリビングを出た。
