朝。鳴り響く電話の音で目覚める。
慌てて受話器を取りにベッドから立ち上がった。
すると、視界の隅に信じられない光景が広がっていた。
…母が血を流して傷だらけで倒れている。
部屋の床には、嘔吐物や血、小物などが散乱している。
「ヒッ…」
小さく悲鳴をあげる。
まさか、これは私がやったのだろうか…?
いや、でもそんな記憶はない。
…記憶はない。いや、記憶がない。
昨日、自傷行為を母に咎められた事は覚えている。
だが、その後の記憶が一切ない。
ふと枕元を見ると、携帯の充電が切れており、イヤフォンが絡まっていた。
私は、夜にイヤフォンを使って寝たことはない。

…悪寒がした。
頭がうまく働かない。
私が、私がやったのか。
私はあれほど憎んでいた母のように、
狂い果ててしまったのか。
力なく床に座り込み、
嗚咽を漏らしながら頭を掻き毟る。
ふと、髪に何かが付着したことに気が付き、
ピタリと動きを止める。
自身の手を見た。
その手はべっとりと固まった茶色い血に染まっていた。
「あ…ああ…ああああ"あ''あ"あ"あ"あ"!!!」