さっきまで俺に握らせていた左手を貴婦人のように、そっと俺の右手に重ねて。
紬未ちゃんはようやく俺と目を合わせてくれる。
涙に濡れた目。
少し赤くなった目元と、鼻先。
紬未ちゃんはいつでも、すぐに泣いて、よく笑って。
いつでも子供のように、まっすぐに自分の気持ちを表現していた。
それは、ともすれば、クールとか、冷静とか、無表情とか言われてしまう俺とは、全く逆の性質で、これまで、俺の周りにはいなかったタイプの女性だった。
そんな彼女に、俺ははじめ、少しだけ驚いて。
けれど、普段は退屈で仕方ない地元へ向かう高速バスの旅が、彼女とのおしゃべりであっという間に終わってしまった。
女性との会話なんて、そう長く続くもんじゃないと思っていたけれど。
彼女となら、俺は自然に笑い、俺は俺のままで、いつもより朗らかな俺になれた。
それはとても新鮮で、不思議な感覚。
けれど、悪くはない。
むしろ、とても心地よかった。