その日は、初めての夜デートだった。

いつも遅くまで仕事をしているらしい匡さんが、定時くらいにあがれると連絡をくれたのが、前々日の夜。

もちろん、前もって、どこに行こうって計画するお休みの日のデートも好きだけど、こういうのも嬉しい。
楽しみにする時間が短いのはちょっと残念だけど、なんだか恋人っぽい感じ。

昼休み、そんなことを言ったら、一緒にランチしてた同僚の尾上真凡(おのうえまひろ)は、なんだか嫌な虫でも見た時のように鼻の頭にしわを寄せた。

「紬未さん。そういうのって……すぐに呼び出せる都合のいい女とか、思われてません?」
「え?」

思っても見なかった言葉に目をぱちくりしてしまった私を見て、はああっと大きなため息をつく真凡ちゃん。

「これだから、紬未さんは……」
「え?どういうこと?」
「素直でイイ子な優等生っていうのも、考え物だって話です」
「え?それ、私のこと??」
「他に誰がいるんですか」

3つも下の女の子に、イイ子、と言われる私って……

成人している社会人としていかがなものなのか、と戸惑う私にビシッと、お弁当を食べていた箸先を突きつける真凡ちゃん。