おばあさんは、そんなディアナを見て、いつも面白そうに笑った。

 おばあさんはいつもこんな調子で、ディアナにはおばあさんの本当の年はわからなかった。

 おばあさんは時々、こんなことをしてディアナを楽しませてくれることがあった。

たいていは、テーブルの上にあるスプーンやお皿に命を吹き込んだように動きまわらせるのだが、時には近くにあるものを使って、小さな部屋を作ってくれることもあった。

その部屋のものは、実際に手に取れるばかりでなく、ポットには本物の熱いお茶が入っていて、カップに注いで飲むことができ、食べ物なら食べてみることができた。ディアナは、小さな部屋の小さなテーブルの上のわずか五ミリ程の小さなレモンパイを味わってみたりして楽しんだ。


 キネビスのおばあさんの所に連れて来られた時、ディアナは三才だった。

お父さんがディアナを育てられなくなった後、お母さんがディアナをおばあさんに預けたのだそうだ。

「どうしても、やらなければならない事がある。」

おかあさんは、そう言ったのだという。

おばあさんは、ディアナのために、庭の木の上に小さなツリーハウスをベトリスに作らせ、夏の暑い晩には、そこでディアナと二人で眠った。ツリーハウスの中は、涼しい風が吹き抜け、窓からは満天の星空が見渡せた。どんなに暑い晩にも、ディアナはそこでぐっ
すりと眠れた。

ディアナの誕生日には、ディアナの背丈程もある、大きくて背の高いデコレーションケーキを作り、ディアナに好きなだけ食べさせてくれたりした。

でもそんなことは一年の内に何回もあることではなく、普段のおばあさんは昔風に厳しくて、キネビスの子供たちが両親に普通に許されていることも、ディアナにはできないことがたくさんあった。

おばあさんは、背中が曲がっていてとても小さく、大きな目が羊に似ていた。ディアナは、お母さんの顔をまったく覚えていなかったので、お母さんも羊に似ているのか、それとも全然違うのか、全くわからなかった。

ディアナはここにつれて来られるまで、お母さんと毎日過ごしていたはずなのだから、少しくらいお母さんの事を覚えていてもよさそうなものだったのに、この家に来たとたん、お母さんの顔を全然思い出せなくなった。