隠された鏡の伝説Ⅰ選ばれし者の定め

それは、ディアナの背中にある大きなあざとそっくりだった。

ディアナは、驚きのあまり、言葉が出てこなかった。

アレセスは、自分の上腕部をじっと見ながら、ゆっくりと言った。

「僕はこのあざが好きなんだ。歩くことが出来ないということで、自分が他のやつらより劣っていると思いそうになると、このあざを見ては、自分は他のやつらより強いんだという思いを、ぼくは小さいころからずっと持ち続けてきたんだ。志魂道だって、このあざのお陰で続けてくることができたんだって思ってる。」

ディアナは、自分が幼いころから抱き続けてきたあざに対する思いとはうらはらに、アレセスにとってそのあざは、今のアレセスという人を形作る、勇気と自信となってきたことを知った。

そして、今、アレセスにとって、自分のあざに対する希望が確信に変わったのだ。

(私とは、ずいぶん違っているわ)

ディアナは、惨めな気分でそう思った。

ディアナは、おばあさんにいくら言われても、自分の背中にある大きなあざが嫌いだった。

みにくいという思いを取り除くことができなかった。

アレセスは、右手を左の肩において自分のあざを見ていたが、ディアナに目を移すと、真剣な目つきで言った。

「僕にとって、このあざはとても大切なものだったから、ランスレイ国王が、僕のあざのことを知っているということが、どれだけ僕を驚かせたか、君には想像できるかい?僕が、なぜ国王が僕のあざのことを知っているのかと聞くと、ランスレイ国王は、何も言わずに自分の腕をまくり上げた。すると、国王の左肩に近い部分に僕と同じ形のあざが現れたんだ。」

ディアナは、自分のとそっくり同じ形のあざを持つ人間が、この世に他に二人いるということが信じられなかった。

ディアナは、めまいがするような気がして瞼(まぶた)を閉じた。

なんだか、部屋の空気が薄く感じられる。

「どうしたの?気分でも悪いの?」

ディアナが目を開けると、アレセスがディアナの顔を覗き込みながら、心配そうに聞いていた。