隠された鏡の伝説Ⅰ選ばれし者の定め

ディアナはその澄んだ目を見て、少し我に帰ってジルミサーレの柔らかな毛をなでた。

「ランスレイ国王は、僕を名継ぎの騎士と呼んだ。名継ぎの騎士は、ユーディアでは昔から代々受け継がれてきていて、ランスレイ国王は王位に就いているが、名継ぎの騎士でもあるらしい。そして、僕は、ランスレイ王の、次の代の名継ぎの騎士、ということになるっていうんだ。でも、僕は、自分がどうしてランスレイ国王の次の代の名継ぎの騎士なのか、わからなかった。だから、僕はランスレイ国王にそう言ったんだ。すると、国王はテーブルの上の本を手に取った。僕が食事をしていたときにはなかったはずなのに、それはまるで、ランスレイ国王が手を伸ばしたときに、机の上に現れたみたいだった。その本にはYの文字の周りに二匹の竜がいる紋章がついていて、僕が持っているこの本とまったく同じ本のように見えた。ランスレイ国王は、この本は、実際にはこの世の中に全く同じものが三冊あり、一冊は僕が持っているこの本で、もう一冊はランスレイ国王が手にしている本だといった。それは、偉言書(いごんしょ)といって、ユーディアの国に古くから伝わるもので、昔からユーディアの国の危機を幾度となく救ってきた不思議な本らしい。そして、偉言書(いごんしょ)というその本には、名継ぎの騎士を連れてくる力があるのだというんだ。新しい名継ぎの騎士が現れるときが来ると、その人物の名前や特徴が偉言書(いごんしょ)の中に、金色の文字で新たに書かれるらしい。それは、誰かが書く、ということではなく、偉言書(いごんしょ)の中に勝手に文字が現れるということらしいんだ。そして、その偉言書に、僕の名が表れたという。僕の家の庭に現れて、本を渡して行った人は、ランスレイ国王が遣わした使者だったと、国王は、僕に話してくれた。そして、ランスレイ国王は、僕のことをまるで父親のような目で見ると、こう言ったんだ。

『君の上腕部には、尾をくわえた竜の様な形をしたあざがないかね。』

僕は、心底驚いた。なぜなら、僕の腕には、ごく小さなときから、ランスレイ国王の言うとおり、竜の形をしたあざがあるんだ。」

ディアナは、アレセスのまくり上げた袖から現れた腕にくっきりと見える、円い竜のあざを見た。

背筋がぞくっとして、体中に鳥肌が立った。