―本人は、ご主人をこんなに苦しめてしまっていて、自分も本当に苦しいのだが、病気のせいで、悲しい話をするとどうしても笑ってしまうのだという―を、奥さんと一緒に笑うべきか、隣にいる、奥さんの分まで苦しみを背負ったようなご主人と一緒に悲しむべきかまったくわからず、しかたなく目で笑い眉毛を八の字にして、口は誤解を受けるといけないという配慮のため真一文字に結び、真剣さを表すための顔の表情として―残された唯一の場所として―鼻の穴を周囲が赤くなるほど膨らませながら、懸命に話を聞いた。

毎日やって来ては、一つの話を繰り返すおばあさんの話も、毎日、毎日、ディアナに出来る限りの感動を込めて心から真剣に聞いてあげた。

―このおばあさんは、毎日、おばあさんが可愛がっている老犬の同じ写真を一枚ずつディアナにくれるので、ディアナはその写真を、輪ゴムで止めて、机の引き出しにしまっていた―

人々は、たとえ治らなくても、ディアナのところから帰る時には幸せそうな表情になっていた。

そうしているうちに、ごく少数だが、なえた足の感覚がもどってきた人や、絶望して先の人生が見えなかった人が、長い長いトンネルの先に小さな明かりを見出すように、明るい兆しを見つけるというようなことが起こり始めた。

このようにして、ディアナが毎日を、全力で過ごしている間、ジルミサーレは、いつもディアナの足元に忠実な僕のようにすわり、ディアナが一段落すると、おばあさんが持たせてくれたお弁当を、ディアナと分け合って食べた。

人々は、ジルミサーレを見ると、こんなに美しいベリーサは見たことがないと言って驚き、その銀色の巻き毛と、すみれ色の瞳をほめた。

そして、これほどすばらしいベリーサと共に暮らしているディアナの前途には、どれほどすばらしい未来が待っているか想像も出来ないと言って驚嘆するのだった。