床はきれいに磨かれて、開いたドアから差し込む太陽の光にピカピカと光っており、壁は新しい真っ白な漆喰(しっくい)が塗られ、開け放たれた窓には、明るい黄色と緑のチェックのカーテンがかかって春の風に揺れていた。

真ん中には木で作られた真新しいテーブルと椅子、部屋の片隅の幅の狭いベッドには、ディアナが小さいときに着ていた黄緑色の服の布と白いレースで作られたパッチワークのカバーがかかっていた。

そのカバーはディアナが針仕事の練習として、初めて作ったものだったが、おばあさんの細かい針目の大作に比べると、自分が作ったものがあんまりお粗末に見えて、出来上がったときはがっかりしたものだった。
だが、今こうして、自分の砦(とりで)ともいえる場所に使ってみると、思いのほか、部屋を明るくする効果が生まれ、カバーが生き生きとしているように見えて、ディアナはうれしくなった。

「なかなか、立派じゃないの。」

ディアナは、自分でパッチワークのカバーをベッドに取り付けたとき、そうパッチワークカバーに話しかけた。カバーは心なしか、うれしそうに体をゆすったように見えた。

 ディアナが、窓のそばに立って、自分で取り付けた看板を見ながらサンドウィッチを食べていると、さっき小屋の前にいたベリーサが入ってきた。

ベリーサはすみれ色の目でディアナを見て、鳴き声を立てた。

ディアナがミルクを皿に入れてやると、ベリーサは上品にミルクをなめた。

ベリーサの銀色がかった灰色の巻き毛が、太陽の光を受けてかがやいていた。  

小屋の中で見ると、このベリーサはこの辺で見かけるベリーサの二倍近くあり、小型の獰猛(どうもう)な肉食動物のように見えた。

それに、このベリーサは尾が長かった。

ディアナはペカンの実のケーキを食べながら、かがみこんでベリーサの首筋を撫でて言った。

「おまえ、本当にベリーサなの?それとも、どこか別のところから来た違う生き物なの?」

ディアナが、ベリーサを撫でているとき、ディアナの視界の中でさっと動くものを感じた。

それは、ディアナがいつも身に付けているブローチの中の少女だった。