ディアナとジルミサーレとの出会いはこんな風だった。

ディアナが、おばあさんに用意してもらった小屋の前に、自分で作った「いやし屋」の看板を取り付けていると、大きな灰色のベリーサがやってきて、小屋の前に寝そべった。

ベリーサはディアナが住むこの地方一帯特有の生き物だ。

ベリーサは、体長四〇センチくらいで、太くて短い尾と、青と黄色の左右で違う目の色が特徴の、うす茶色の体毛を持つ動物である。

ベリーサはなかなか飼いならすことの出来ない動物として知られていたが、一方で、繁栄をもたらす動物ともいわれ、キネビスの人々は、ベリーサを大切にしていた。

家々の前には、ベリーサ用に取り分けられた、肉の切れ端や、ミルクが置いてあった。

ベリーサはそれを食べて、その家が気に入ると家の中に入ってくることがあり、その家の人々と生活を共にして、その家を悪いことから守ってくれると言われていた。

ディアナの小屋にやってきたベリーサは、ディアナがいても気にする様子もなく、ディアナのすることを眺めていた。

ディアナは看板を取り付け終わると、小屋に入り、お昼にしようと、おばあさんが持たせてくれたバスケットを持ってきて、小屋の中の小さなテーブルの上に置いた。

バスケットの中には、今朝焼いたばかりのふっくらとしたパンに、新鮮なバターを塗って、ディアナの大好きなカリカリに焼いたベーコンに、グリルした鳥を細かく裂いたものと、クリームチーズとレタスとトマトをはさんで、おばあさんの特製ソースがかかった大きなサンドウィッチが二つ入っていた。

デザートには、ペカンの実とローズマリーを入れて作った生地にカラメルソースをかけて焼いたケーキが数切れ入っていた。

小さなビンにはミルクも入っていた。


 小屋は丸太を使ってできており、おばあさんの家の庭の片隅にあった。

ここからは、おばあさんの、葉っぱの畑は見えなかったけど、時々、庭師のベトリスが少し離れたところで働く姿を見ることが出来た。

この小屋は、おばあさんが以前、物置として使っていたもので、ディアナのために、おばあさんが気持ちよくしつらえてくれていた。