そこに書いてある小さな飾り文字は、古い字体を使って書かれた古語で、ディアナには大変読みにくかった。

しかし、おばあさんが声に出して読み終わった後何も言わないので、おばあさんが読んでくれた先を、四苦八苦しながら読んだ。そこにはこんなことが書いてあった。

『また、いやしの業を行う者は、自在に使える数々の強い業を身に秘めている。その業の力は、完成する前にも、片鱗(へんりん)が見え隠れする。』

ディアナは、それがどういう意味なのか、まったく分からなかった。

慣れない飾り文字の古語を一生懸命読み解いているディアナを、おばあさんは、愛らしい小さな生き物でで
もあるかのようにいとおしそうになでた。

「お前は、いやしの力を持って生まれた。お前は力のあるいやし屋だ。多くの人を助けて、喜ばれるだろう。だが、もっと、もっと強い力がなければ解決できないような問題を持った人間もたくさんお前のところにやってくる。だから、もっと力をつけなさい。そして、力を願いなさい。」

ディアナは、ランディ先生との毎日の砂を噛むような勉強に飽き飽きしていた。

だから、いやし屋という仕事がどんな仕事かよくわからなかったけれど、とにかく自分の人生に吹き始めた新しい風に、わくわくした気持ちになった。

「もっと力を付けるにはどうしたらいいの?」

「やってくる試練を乗り越えて、強くなる。普通の人間が強くなるのと同じさ。」

「普通、人はどうやって強くなるの?」

「人生に鍛錬(たんれん)されるんだよ。」

おばあさんは、立ち上がって暖炉に薪を投げ込んだ。
そして、もう一度椅子に座ると、ディアナを見ながら言った。

「時には、自分にはとても乗り越えられないと思うような、とてつもなく大きな試練がお前の目の前に降りかかってくることもあるだろう。」

おばあさんは、自分の隣に立っているディアナの手を、自分の手で包んだ。おばあさんの手は、温かくて乾いていた。

「だが、忘れてはいけない。お前はそれらの試練を乗り越えるだけの力がある。試練というものは、その人間が乗り越えることができる程度のものしか降りかかってはこないものだ。」

おばあさんは、ディアナの手を軽く叩くようにしてから、人差し指を突き出すと、自分の鼻と口に押し当てるようにして言った。