星と太陽に魔法の歌を

「そ、そうだよ」

玲奈は、少年の言葉にうなずいた。少年は何かを考え込み、口を開いた。少年の頬は少し赤く染まっている。

「…この近くの診療所って、加藤(かとう)さんの所かな?」

玲奈は診療所の先生の名前に反応し、大きく何回もうなずいた。

「分かった…僕が案内するよ。あ、僕の名前は篠原 影光!よろしくね」

影光が微笑むと、玲奈の頬が赤くなった。玲奈も自己紹介をする。

「よし、こっちだよ!」

影光は、玲奈の腕を引っ張ると診療所に向かって走り始めた。

診療所に着くと、玲奈は急いで母の元に向かう。古い木のドアを勢いよく開けると、母はとても暗く辛い顔で玲奈を見た。

玲奈の視線は、結奈に向けられる。結奈は、弱々しく眠っていた。

「あのね。玲奈…?良く聞きなさい」

いつもの様子と違う母の様子に、玲奈は言わずとも状況を理解してしまった。

「結奈は、死んだの…?居なくなったの…?」

玲奈が問いかけると、母はゆっくりと首を縦に振った。その様子に玲奈は、泣き崩れる。結奈とは、母以上に長い年数をともに過ごしていたから。

(何で私が神の使いにならなければならなかったの!?何で、こんなに短い時間で結依様と離れなければならないの!?)

玲奈はこの時初めて神の使いであることを悔やんだ。もし、玲奈が神の使いでなければ、こんなに苦しい思いをせずに済んだからだ。元々玲奈は、あまり人には興味が無かった。居なくなってもどうでも良い、と思うほどだった。