「…美影くんに『氷翠が嫌いだ』って伝えた上で『美影くんが好き』って言った。もちろん、氷翠が隠れていることを知った上で。氷翠に言ったんだ…『氷翠が嫌い。何もしていない氷翠が、努力をしている私よりも成績が上ってどういうこと?ウザイから』って…」

「…っ!誰かに相談はしたの?」

「え、し…してない」

「何で?」

「な、何でって…言われても」

僕は、怒りがこもった目で瑠梨を見た。

「…じゃあ、その時に氷翠と美影の気持ちは考えた?」

瑠梨は、戸惑った様子で僕を見つめた。

「もっと良い方法があったでしょ!その方法が、どんだけの人を苦しめていると思っているの!氷翠は、瑠梨の言葉でどれだけ傷ついた?…美影は、瑠梨の行動でどれだけ傷ついた?…それがお前に分かるのかよ!…ごめん。きつく言いすぎた」

瑠梨は「大丈夫…私もそれを言われる覚悟だったから」と目を泳がせている。僕は、瑠梨に謝って歩き始めた。千晴が僕によってくる。

「深冬、瑠梨も考えた結果…あんな行動を取ったんだと思うんだけど…」

「だからって、美影まで巻き込むことは無いでしょ」

「それは、そうなんだけど…あの言い方は良くないんじゃないの?…まぁ、瑠梨の行動は俺も良くないとは思うけど…」

千晴は、深いため息をついた。それ以上、僕らは何も喋らずに歩き続けた。不意に僕が小学生の頃と中学生の頃の記憶が脳裏に浮かぶ。

…あれ、何で…こんなに胸が苦しいの?

「…ごめん、なさい」

僕は小さな声で謝ると、家に向かって走って行った。



俺は、急に走り出す深冬の姿を唖然と見ていた。

…俺、変なことを言ったか?な、何で…もしかして、俺は嫌われたの?

自然と涙が込み上げ、俺はその場で泣き崩れた。