星と太陽に魔法の歌を




今日は魔法学校の卒業式の日。その日の放課後、俺は魔法学校の校庭に咲く大きな桜の木の下で佇んでいた。

「深冬、卒業おめでとう」

深冬の卒業証書を空に掲げ、俺は呟いた。

――千晴!この木、簡単に登れそうだよ!

俺が保育園児の時、木登りが好きだった深冬がいった言葉が脳裏を過ぎった。

俺は何を思ったのか荷物をその場に下ろし、ローブを脱ぐと木を登り始めた。

木のてっぺんまで登り、木の幹に立って街を見下ろす。この木から見える街並みは、とてもきれいだ。不思議と何もかも忘れることが出来る。

俺は、ずっとその景色を見ていた。その場で魔法を使い、下に降りるとカバンを肩にかけて正門を出た。そして、通学路を歩き始める。

「……っ!?」

急に体が重くなり、俺は地面に倒れ込んだ。

……この感じ、もしかして…悪霊…か?

俺は、いつもの癖で印を結び言霊を唱える。しかし、霊能力が使えないことを思い出して印を結んでいた手を解いた。

……くそっ。どうしよう…このままじゃ…俺は確実に――死んでしまう。

呼吸が乱れ、胸が苦しい。俺は、ずっと誰もいない道で倒れていた。

次の瞬間、俺の体に激痛が走った。何かに刺された、と気がつくまでに時間はかからなかった。

「……遅かったか…っ!!僕の大切な人に手を出すな…っ!」

俺は、懐かしい声を聞きながら息絶えた。