私は子供の頃から

ヒーローが現れるのを待っていたんだ――


      キミはhero!



「待てやコラァアァッ!!!」

「そんな鬼の形相した人に止まれるワケねェェッ!!」

私は今、そんなに速くもない足を新幹線でも抜けるんじゃないかってぐらい今までにないスピードで駆け抜けている真っ最中です

ぜひとも50m走のタイムを測って頂きたい

なんて、今は全く必要ないことを考えていると、もうすぐそこまで来てしまっていた


このままじゃ…捕まる!!

焦燥感で心と身体にギアをかけ、更に速さを増したが男子の素晴らしい脚力には到底かなわない


うわっ!もう無理だ…

私の襟元を掴もうと伸びた腕を見て諦めかけた


そのとき


「うわっ!!」

男子の驚いた叫び声と、ドシンと地面に叩きつけられた地響きが響き渡った


呆然としている私に柔道技で投げたのであろう見知らぬ男子が立ちはだかった


「大丈夫?」


凛とした声、キリッとした顔立ち、
鍛え抜かれた何でも守れるような逞しい腕


そう、まるで


「ヒーローみたい!!」

「は?」

「いやこっちの話です、すみません」







―Fin


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