それでも落ち着かないし、視線が気になった。



「青笑さん」

「ひっ」



名前を呼ばれて反射的にふり向くと、リョウタ……隣の席の人に「ふっ」と笑われた。


……は?

なにこの人、バカにして



ーー「怖がらなくても大丈夫だよ」



ドキッと、した。

てっきりバカにして、からかわれるんだと思ってたから。



「べつにっ……」



予想外に心を見抜かれて、焦った。



「……怖がってない、」



キツい言い方をしてしまい、ハッとする。

こんなんだから、あぁ言われるんだ。



ーー『先生〜〜あたしこの班イヤでーーす不機嫌な人いるんだもん。空気悪くなる〜〜』



高校一年生の夏。

理科室で顕微鏡を使った実験をしていた時のこと。



『……ごめん』



空が謝るとその子は怒った。



『っ……思ってもないくせに』



って。


じゃぁ、ーーなんて言えばよかったの?


未だに答えは出ない。

でも、たぶん答えなんかなかった。

どう謝ってもダメだった。

だって空がダメだから。


先に目を逸らしたのは空のくせに、モヤモヤはどんどん膨らんでいく。