ただ隣にいる。
それだけでこんなに胸がじんわり温かくなるなんて、今更気づいて。
ずっとどんな時もそばにいてくれた奏が頭に浮かんで、目がじんわりした。
……ホットアイマスクのせい。
「……あと、水もあるから」
ちゃぽんと水の揺れる音が耳に残り、またじんわり、ゆっくり熱が広がる。
ホットアイマスクがひんやりしてきた頃、ストンと肩になにかが落ちてきた。
そっと視界をあけて右肩をみると、さらりと髪の束が流れる。
焦げ茶色の髪が照らされ、薄く光を帯びている。
舞うほこりがきれい。温かい色だ。
手をおいても目には見えない。
それがまたよかった。
まだこのままでいたかったのに、かすかな足音がしてハッと目が醒める。
もし見られたら……
そう思うとじっとしていられなくて、りょうたの肩を優しくたたいた。
ぴくりともしない。
ーー『そのまま爆睡してもいいよ、ぐぁーー』
『ふははっ』
……りょうたが爆睡してんじゃん
ほんとうによく寝る人だ。
って、今はそんなことに感心してる場合じゃない。
もう一度、今度は少し強く肩をたたいた。
え。なにこのこの人全く起きる気配ない。