「ちょっと待ってて」



力が抜けたようにふたりで尻もちをついていたら、ふいにりょうたが立ち上がった。

すっと手の温もりが離れていく。



「ぇっどこ行くの……」



とっさに言葉が出てしまいハッとする。

りょうたは目を細めて、ふっと頬を緩めた。



「すぐ帰ってくるね」



トンっと胸をたたかれたみたいな衝撃でなにも言えなくて、ただ遠ざかっていく背中を見て寂しくなった。

一人になると静かで、なんだか物足りない。

平気だったはずなのに、一人が良かったはずなのに、もう。


ガラ……


しばらくのあとドアが開いて、ドキッと胸が鳴る。

ぼんやり見上げていると、あたたかいもので視界をふさがれ、眩しい笑顔が隠れた。


……なにこれ



「ふふっ……あったかいタオル。秋ちゃん、保健室の先生がくれた」

「……なん、で……?」

「えっ、と……ほっとアイマスク……?」

「ふっ……」

「そのまま爆睡してもいいよ、ぐぁーー」

「ふははっ」

「……どう?」

「……きもちいい、あったかい……」

「……」