どこかの国のお姫様になったみたい。



「安全運転のため、しっかりつかまっててくださーい」



……なにそれ王子様っぽくない



「ぐすっ……ふっ」

「ほらもっとぎゅっとしないと……落としちゃうかも」

「……こわい」

「へへっうそ大丈夫!そのときは俺がクッションになります」



それじゃぁ空が助かっても、りょうたがしんじゃうじゃん。



「空がクッションになる」

「……そしたらお互いがクッションになろうとして……回転しちゃうね」

「っ……っ」



くるくる回転しながら落ちていく自分たちを想像し、思わず小さく吹きだした。

りょうたの笑い声、あったかい。

懐かしい人の熱を落とさないように、ぎゅっと抱きしめた。



「とうちゃーく」



壊れかけのものをおくみたいにそっと、地面に足をおろされる。



「ここ……知ってたの?」



目を向けても、りょうたは眉を下げて微笑むだけだった。

そして一休みするみたいに窓側の壁にもたれ、力の抜けたように笑う。



「……」



“おいで”


なにも言われなくても目で分かった。

それを口に出さないのは、りょうたの優しさ。