ぶわっ、て

何個も教室を通り過ぎて

足音とか周りの声とか分かんなくて



「っ……ぁ……うぅっ……っ」



なんか、涙がでるんだよ。

走って息くるしいのに、ぼやけて見えないのに



「はぁっ……っふ……ぅ……っ」



ちゃんと吸って吐ける。

くるしいけど、苦しくない。

今の方がよっぽど。

汚れた水溜りに温かい光が差して



「いいんだよ、いいよ」

「もっと自由でいいんだよ」



ゆっくり、優しく汲み取られるみたいに。



「……っっ」



流れていく。



「ここまで来たら……」



階段の踊り場で立ち止まったりょうたは、きょろきょろとあたりを見回した。



「よしっ……一瞬だけ俺のお姫様になっていただけますか」



……え……?



「はぁ……っ……はぁ……ぐす、……」



泣いて、走って、頭がよくまわらない。

パニックになっていると、りょうたに握られている手が、りょうたの肩に優しくおかれた。



「ごめんね」



紳士に謝られて、ぐわっと体が浮く。



「ぇっ……っぐすっ……なにごれ……」



ふふっと、柔らかい笑い声だけが耳をくすぐった。