ーーこわい、こわいこわい
その言葉が胸の奥深くに落ちてゆく。
水溜りになって、いつまで経ってもなくならない。
溜まって溺れても、それに誰も気づかない。
自分のせいで静まり返った教室に、担任が入ってきた。
“「かんじ悪い」”
“「ひどい」”
“「せっかく話しかけてやったのに」”
先生の声が遠い。
いらない言葉だけ、いつもすり抜けてくる。
ーー恐い
息が苦しい。
苦しい。
ごめんなさい。
なんであんな言い方しちゃったんだろう。
せっかく話しかけてくれたのに。
でもなにか間違ったこと言った?
空は間違ってない。
怒りと悲しみが複雑に絡み合う。
空って、こんなに性格悪いやつだったんだ。
分かってたけど。
そんなのずっと前から知ってたけど。
自分に失望した。
「……っ」
溜まったものが溢れ出しそうになり、ぎゅっと唇を噛んだ。
大嫌い。
だいっきらいなんだよお前なんか……っっ
声を押し殺しても、もうダメだった。
周りのことを考えるのにもう疲れた。
空に居場所なんてどこにもなかった。
映画だと皆から嫌われる悪者で。
あぁもう……透明になって消えたい
空は元々ここにいなくて、来てなくて、存在すらなかったことにして消えたい。
雨みたいにうっとうしがられて、流されて、静かに消えたい。
ぜんぶ諦めたら楽になった。


