「ありがと。」

私は奏に頭を下げる。

「でも、話は先にケーキ
買ってからな。母さんが家で
今か今かと
待ち構えてるだろうし。
あとで俺の部屋で話すってことで。」

「分かった。」

それから私たちは、私の好きな
チョコレートケーキをホールで
買って家に帰った。

「2人ともおかえりなさい!
結乃ちゃん、退院おめでとう。」

家に帰るなり紗綾さんに2人
まとめてぎゅっと抱き締められた。

「ただいまです、紗綾さん。」

そう言うと、紗綾さんは少し
遠慮がちに私の方を見て言った。

「結乃ちゃん、そろそろ私のこと
お母さんって呼んでいいのよ。」

「そうですね......。」

軽く言葉を濁す。
私のお母さんはまだ生きてる。
今は服役中だけど、
いつかはまた、会うことになるだろう。

もしかしたら一緒に暮らすかもしれない。