「しかも、」

笑顔のまま、奏は続けた。

「俺は、葉音は自分の両親に
ちゃんと愛されてると思うけど?」

「なんでそう思うのよ。」

幼い頃から家に子供を1人で放置して
自分達は海外を飛び回ってて。

ときどき帰ってきてもお金が入った
封筒だけ置いてすぐに出ていく親が、
子供を愛してるわけないじゃない。

「葉音は親に殴られたこと、ある?
首を絞められたことは?
存在ごと否定されたこととか、
商売に利用させられそうになったこと
とか、そういう経験ある?」

それは......

「ない。」

「じゃあ、愛されてるよ。」

「なんでそんなこと聞いたの。
もしかして奏は......
そんなことをされてるの?」

尋ねると奏は寂しそうに笑った。

「俺は親に商売道具にされそうに
なっただけ。殴られたり蹴られたり
虐待されてたのは結乃だよ。」

嘘。

結乃が、虐待に遭ってたの......?