父さんはギャンブル狂で、
母さんもそれには苦労してた。
だから、母さんが亡くなったとき
父さんは親権を放棄したんだ。

俺は捨てられた。

これからは児童養護施設で
暮らすことになるのか、
なんてぼんやりと考えてみたけれど
なかなか実感なんてものは湧かないもの。

それからすぐ神影家に引き取られた。
神影家は父も母もいい人だ。

結乃を連れて帰ったときも俺のわがままを
聞いて泊めていいよって言ってくれた。

紗綾さんと透さんには何て言っていいか
分からないくらいに感謝してる。

それから俺は結乃と同じ中学に進学し、
今は同じ高校に通ってる。

中3の学園祭。
結乃はきっと思い出したくないだろう。

演劇をやると聞いたときは適当な脇役か
裏方についてやればいいなんて考えてたのに
まさか主役にされて相手が結乃になる
なんていうハプニングが起きて。

しかも内容はロミオとジュリエット。
お互いを想い合う恋人の役だ。

ずっと、片想いをしてきた。
俺の想いが結乃に届くことは、
恐らく、この先ずっとない。

伝えるつもりは、ないから。