しばらく走っていると、
ぼんやりと空港の影が見えてきた。
走りすぎて悲鳴をあげている足を
奮い立たせて前へ前へと動かす。

目が乾いて視界が滲み、酸素不足で
意識もかなり朦朧としていた。

少しフラついているけれど仕方ない、
君に会えるならこれくらいのことは
いくらでもやってしまえる。

そしてやっと目の前に現れた
空港に一目散に駆け込んで。

30分後にはパリを出た。

飛行機でパリから日本まで行くのに
掛かる時間は大体11時間と45分くらい。

待っててよ。
頼むから、逝かないで。

心の中で必死に祈るけれど、所詮ここは
飛行機の中、フランスの遥か上空だ。

俺がここで結乃にしてやれることなんて
ほとんどなくて、強いて言えば
こうやって彼女の無事を祈るくらい。

ヤバいな、俺。
結乃が心配で頭がおかしくなりそう。

いつだって、結乃は俺を思いのままに操る。
彼女の仕草や言葉に一喜一憂して
気が付けば彼女の虜になっているんだ。