すると父さんは俺が予想も
していなかった攻撃をしかけてきた。

『俺のギャンブル仲間、この近くで
カジノやってんだよ。お前が逃げても
そいつに頼んで必ず捕まえる。お前は
金稼ぐまでここから帰れねーんだよ。
分かったならさっさと働け。』

ニヤリと笑う父さん。
その意地汚い笑みが大嫌いだ。

結乃の優しさや性格は誰から
引き継がれたものなのだろうか。

きっと、俺に目一杯の愛を注いでくれた
母さんの優しさが結乃に遺伝してるんだ。

俺を追っているのは十数人程度。

バスケ部で鍛えた脚力なら
このまま走って空港まで逃げきることが
出来るかもしれない。

最悪、乱闘になったとしても小手先の
技術くらいは持ち合わせてるから大丈夫だ。

俺は路地裏からわざとパーカーの端を
追ってから見える位置ではためかせる。

「いたぞっ。」

その声を聞いて反対方向に駆け出した。

目指すはここから数キロの所にある空港。

待っててくれ、結乃。すぐに行くよ。

会いたいから、会いに行くんだ。

追っては反対方向に追いかけていったはず。
そう思っていたけれど意外と早く
俺の仕掛けた罠に気付いたらしく、
1時間後には数人の追っ手が俺の視界に
入るところまで追い付いてきていた。