それから、友梨那は盥ヶ峰の土地を出て
私大に合格、夏乃香は地元の専門学校に
進学することを決めた。

確かに私のお母さんは盥ヶ峰の専門学校
を出ていて、奏のお母さんは私大出身だと
聞いたことがある。

ドクン。

心臓が嫌な音を立てた。

もしかして、これは私のお母さんと
奏のお母さんの関係を描いた
映画なのかもしれないということに気付く。

大学や専門学校、お互いの場所で
過ごしていても2人は連絡を取り続けて
ときどきカフェで会って話すこともあった。

楽しそうに話をする友梨那に、うんうんと
相槌をうちながら話に聞き入る夏乃香。

2人は、最高の親友だったみたいだ。
それから、友梨那が結婚して
急に盥ヶ峰から引っ越すことになる。

夏乃香は笑顔で見送ったけれど、今まで
お互いを信頼しあっていた2人の関係は
ドンドン薄くなっていった。

夏乃香も結婚し、2人は偶然にも
同じ年、同じ月に子供を授かる。

友梨那は女の子を、夏乃香は男の子を。

しかし、それは2人にとって
とても不都合な子供たちだった。

友梨那は会社経営をする多忙な夫から
いつも跡継ぎになる男の子を産めと
圧力をかけられており、反対に夏乃香は
義両親から女の子を授かってくれと
かなり強く期待されて言われていたから。

2人は久しぶりに連絡をとり、お互いの
望まれない子の誕生を慰め、苦しんだ。

そして、あることを思い付く。

それが子供の交換。

私はもう目の前で繰り広げられる
恐ろしい事態を見ていられなかった。