そこは現実ではなかった。

ここはたぶん映画館だ。

壁も、床も、シートも、スクリーンも。
その全てが、蒼い映画館。
私はスクリーンから5列離れた椅子に
いつの間にか座っていた。

後ろを振り向くと、写真でしか
見たことがない映写機が置いてある。

ここは、どこだろう。

ふかふかのシート、大きな映写機など
鮮やかな蒼で彩られたこの映画館は、
かなり昔のもののようだった。

『上映を開始いたします。』

機械音声の無機質なアナウンスが流れる。

―罪―

それが映画のタイトルだった。
序章という文字が映し出される。
そして映画の本編が始まった。

音声はなく、映像だけが流れる映画。
2人の少女が笑っている。

1人の少女の名前は、友梨那。
奏のお母さんの名前だ。

そのことに気付いて感心していると次に
映し出された名前に私は更に驚いた。

もう1人は、夏乃香。

なんと、1人は奏のお母さんの名前で、
もう1人は私のお母さんの名前だったんだ。

都会からは電車で何時間もかかるような
山奥の田舎で、2人は暮らしている。
2人は川原で水に足をつけながら話を
していたり、近所の猫に餌をやっていたり
とても親しげな様子だった。

顔を見合わせて笑って、時には喧嘩して。
さまざまな経験をしながら2人は小学校、
中学校、高等学校を同じ学校の、
同じクラスで過ごしていく。