見上げる空は、ただ蒼く

俺の母さんと結乃の母さんはどちらも
盥ヶ峰で生まれて育ち、とても仲の良い
幼馴染みだったらしい。

小中高と同じ学校、同じクラスで日々を
過ごして俺の母さんは盥ヶ峰を出て私大に
合格、結乃の母さんはそのまま地元の
専門学校に進学したんだということを、
俺はかつて母さんの親友だった人に聞いた。

それからのことはよく分からない。

俺たちの親はかなり親しい幼馴染みだった
らしいけど、俺たちが生まれる頃には
もう離れ離れになっていて別の暮らしを
送っていたから。

俺と結乃、お互いの母親同士が実は
幼馴染みだったなんて正直いうと
全く信じられないくらいの驚きだ。

だけど。俺をガンで死ぬまで愛情をもって
育ててくれてたあの母さんが、
本当は俺の母さんではないという事実。

弓なりに細めて笑う目。
頭を撫でてくれる手。
抱き締めてくれたときに感じた体温。

それらはすべて、俺とは全く関係のない
他人から与えられたもの。

そんなの、信じたくなんてない。

家族とそこそこ上手くやっていた俺でさえ
ここまで傷つくのだから、結乃はもっと
事実が心の奥深くに突き刺さってもう2度と
治らない傷になってしまうかもしれない。