握りしめた拳が震えた。

「どういう、ことなんだよ......」

すぐに検索アプリを開いて女子高生の
自殺未遂についての
ニュースがないか調べてみた。

『盥ヶ峰駅で女子高生が電車と接触』

そんなニュースを見つける。

盥ヶ峰。

それってもしかして。

結乃の母さんと俺の母さんが...。
いや、違う。
結乃の母さんのフリしてる俺の母さんと
俺の母さんのフリしたままガンで死んだ
結乃の母さんが生まれ育った町だ......。

「なんで、あんな最悪な場所で
死のうなんてこと思ったんだよ。」

呟きが西洋の街並みに溶ける。
結乃は、俺たちの生まれについては
なにも知らないはずなのに...。

俺は深呼吸を繰り返して、
スマホに映るニュースを読み進めた。

『少女は電車と接触したもののすぐに
救急搬送されたため一命をとりとめ、
今は入院している。また、少女が電車と
接触した場所で古いラジオが見つかり、
事件と関係があるのかどうかを
警察が現在調査している。』

古い、ラジオ。
その単語で、俺は毒気を抜かれたかのように
へなへなとその場に崩れ落ちた。