「奏......!」

きっと思い出さない方がいいの。
君に逢いたくなるから。

私の声は果てしなく続きそうな暗闇に
虚しく響き渡り空間を引き裂く。

私は死にたかった。
どうせなら一息に死んでしまいたかった。

いや、もしかしたら生きていると
勘違いしているだけで本当は
もう死んでいるのかもしれない。

暗闇は私にとって過去のトラウマの1つ。
お母さんが私の目を塞いでカッターで
首を切ろうとしてきたことがあるから。

あの時は隣の家に住んでいた人が、
回覧板を渡しにきて異変に気付いてくれた
おかげでなんとか助かったけれど、
もしも気付かなかったらきっと私は
あの時にあっさりと死んでいたはずだ。

暗闇は怖い。

先へ進む道も後ろへ戻る道も全てを
飲み込んで隠してしまうから。

「誰か、助けて。」

ダメもとで助けを求めてみるけれど
やっぱりここには私しかいないみたい。

どうしよう。

考えているとぽんと地面から
可愛らしい赤の椅子が出てきた。
どこからこの椅子は出てきたんだろう。
それに、いったいどうやって?