ここが夢なのか現実なのかは分からない。
ただ、真っ暗闇の世界だ。

私は死んだのか、生きているのか。
今の私にとって、そんなちっぽけなことは
正直にいうとどうでもよかった。

片想い。

その言葉の意味を知りたい。
すると、ポンと軽い音がして、
上から辞書が落ちてきた。

そしてぽうっと辺りが明るくなる。
私はためらいもなく辞書をひく。

片想い、と調べてみれば、

『一方からだけ思い慕うこと。片恋。』
『一方的に恋い慕うこと。片恋。』

さらに片恋と引いてみれば、

『自分を思わない人を恋い慕うこと。』

と書いてあった。

小学校の頃は、わざわざ辞書を引くのが
面倒であまり好きじゃなかった。
家の辞書は埃を被っていて。
そんな私を変えたのは1冊の本。

三浦しをんさんが書いた
『舟を編む』という小説。

中1の時に読書感想文を書くために
読んだその本が、私の辞書への価値観を
ガラリと変えてしまった。

この物語は、辞書を作る話だ。
ひたむきに言葉と向き合う主人公や
その周りの人々を見て私は心を打たれた。

それから、辞書を好きになって。
家の辞書は埃を被らなくなった。