結乃が眠るベッドの横の
丸椅子に座って彼女を眺めた。

なんて綺麗なんだろう。

透き通るような白い肌に目元を
縁取る長い睫毛。

ベッドの上の結乃は眠り姫みたいだ。

ごめんね、結乃。

心の中で呟いて彼女の手を取る。

腕には、たくさんの点滴が刺さっていて。
頭や足には分厚い包帯が巻かれている。

ホームから線路に飛び込んで自殺未遂。

そんなことをしてしまうくらいに
結乃は追い詰められてたんだね。

気付けなくてごめん。

奏みたいに寄り添えなくてごめんね。

「また、結乃と話せたらいいな...。」

病院を出て、私は真っ先に
スマホを取り出して奏に電話をかけた。

prrrr.prrrr.prrrr.

虚しく響く呼び出し音。
お願い、電話に出てよ。

しばらくして、機械音が応答する。

~おかけになった電話はただいま電波の
届かない状態にある可能性がございます~

スマホを耳元から離してため息をついた。

「やっぱ、無理かも。」

結乃を奏に会わせてあげたい。
そうすればきっと結乃も目を覚ますから。
その為には、私が頑張らなきゃ。
2人の笑顔は私が守るって決めたの。

「諦めちゃ、ダメだ。」

もう1度スマホを開いて
奏の番号をタップしてみる。

prrrr.prrrr.prrrr.prrrr.prrrr.

~おかけになった電話は......~

prrrr.prrrr.prrrr.prrrr.prrrr.

~ただいま回線が込み合っている
場合がございますので、
後ほど時間をおいておかけ直しください~

後ほどじゃ、ダメなんだよ。
今じゃないと。