友達になりたくて、声をかけた。

結乃はあの時のまま変わらず
誰にでも優しくてすぐに私は結乃と
仲良くなった。

だけど本当は結乃のことなんか
家庭環境さえこれっぽっちも知らなくて。

忘れられない、雨の日の朝休み。
奏が突然、私に打ち明けた。

『結乃は母親に虐待されてたんだ。
その母親は酒に溺れた挙げ句に
轢き逃げ運転をして逮捕されてる。
父親はかなり昔に結乃の母親に呆れて
離婚して出ていったらしい。』

気を失いそうなくらいショックだった。

いつも控えめににこにこ笑ってる結乃。
家でも両親に愛されて笑ってるんだと
勝手に想像してた。

自分の中の負の気持ちを
心に固く閉じ込めて笑ってたなんて。
なんで気付かなかったんだろう。

『奏は、なんで知ってるわけなの。』

尋ねると、彼はふっと笑って答えた。

『結乃のことは俺が守るって
あいつと約束したから。それに、俺と
結乃は養子縁組で同じ家に引き取られた
から戸籍上は兄妹なんだよ。
家族のことは大切にしないとね。』

養子縁組。

ということは奏の家庭にも何か大きな
問題があったってことだ。

親権を手放された結乃と奏。
どれだけ辛い思いをしてきたんだろう。

胸がきゅっと痛くなる。
そしてあの時から私は誓った。


『2人の笑顔は私が守る』

         ってことを。