見上げる空は、ただ蒼く

目を開けると、外はまだ薄暗くて
太陽が昇っていないみたいだった。

私はさっき見た夢を思い返す。
まだ心臓はドキドキしていて。

今の私は覚えていない、小さい頃の記憶。
あの自動車事故は、いったいなに?
なんで今あんな夢を見たんだろう。
思い出せそうで思い出せない、
脳裏に何か引っ掛かるものがあった。

あれは、たぶん私が年長の時だ。

私は机の上にあるスマホを取って
検索アプリを開いた。

『20※※年 自動車事故 幼稚園児』

思い付くワードを並べて検索してみる。
すると、いくつかのサイトがヒットした。

『○○公園幼児障害自動車事故
~ディアモットハー哀しい記憶~』

ディア、モットハー?
この言葉、どこかで聞いたことがある。
ディア、モットハー......Dear mother。
これは、あのときの......?

『おかあさんにあげるの!』

頭が割れるように痛い。
もう少しで思い出せそうなのに。

『うわぁ、すごいねっ!』

「あたま......い、たい......っ。」

手からスマホが滑り落ちた。
私はベッドの脇にうずくまる。

『ねぇ、しってる?おかあさんへって
えいごでかくとディアモットハー
になるんだって!いとこにきいたの!』

「......っ......怖い、のにっ。」

『へぇ、そうなんだね。ゆいのちゃん
いろいろしっててすごい!』

「......やだっ...ねぇ、なんで...っ。!」

頭が痛くてくらくらする。
僅かに視線を上げれば自分の部屋が
ぐにゃりと歪んで見えた。

詩鐘川公園幼児障害自動車事故。
その記憶が蘇ってくる。

赤い車。
血で赤く染まった女の子。

世界が真っ赤に見えた。
まだ小さな頃の私は、
あまりにも無知で未熟すぎたんだ。


あのとき私を突き飛ばしてくれたのは......












小さな頃の凜、だった。