それは、突然の出来事だった。

「俺、1週間後からアイツと
フランスに行くことになった。
期間は1ヶ月くらいかな。」

「.........え?そ、そうなんだ。」

奏がお父さんと、フランスに行く?
あんなに嫌がっていたのに。
私は凄く混乱して舌を噛んだ。

「俺さ、フランスにおばあちゃんが
入院してるんだ。フランスでしか手術を
受けられない病気で。今度、手術が
あるから俺も付き添いたい。だから
フランスに行くことにしたんだ。」

奏のおばあさん。
確か名前は八千代さんで、
私も何度か会ったことがある。

とても優しくて、いつもニコニコと
笑っているような人だった印象だ。

『ゆいのちゃんは奏にとって
いいおともだちだねぇ。これからも
ずっと2人で仲良くするんだよ。』

そう言われたこともある。

「八千代さんの為なら私も奏に
フランスに行ってほしいと思う。
お父さんと一緒なのはちょっと
不安だけど。応援するよ。」

私がそう言うと、奏は肩の力を抜いて
ふわりと笑みを浮かべた。

「ありがとう。結乃が賛成してくれて
ちゃんと心が決まった気がする。
ごめんな、伝えるのが急になって。」

あまりにも申し訳なさそうな
表情に私は少し笑って、
心の中にある不安を誤魔化した。

「私のことは気にしなくて大丈夫だよ。
ちゃんとフランスで手術する
八千代さんに寄り添ってあげて。」

「......そうだな。」