2人とも落ち着いてきたあと、
奏はふっと息を吐いて私に告げた。

「俺、ずっと前から気づいてた。
結乃が作り笑いしてるってことに。」

「そう、なんだ......。」

僅かに視線をそらす。

ごめんね、奏。

PTSDが酷くなって、あるときから
私は心から笑えなくなった。
朝起きても学校で誰かと話しても
励まされても貶されても、
私に付きまとうのは母の面影。

『出来損ないが!』
『あなたなんかいらないわ!』
『死んで詫びなさい!』

母の言葉や行動が嫌でも
フラッシュバックして身体が震える。

この広い広い世界で、
1人ぼっちになったような気持ちだった。

「今の私なんかには.........
奏の隣にいる資格なんてない。」

そうだ。
私には資格なんてない。
君と笑うことも。隣にいることも。
一緒に泣くことも笑うことも。
私の役目じゃない。

「そんなこと.........」

否定してくれる奏をとめる。
別れを告げないとといけない気がした。

「いいの。慰めなくてもいい。
私がいなくなればいいだけだよ。
私は....奏のことが好きだった...っ。
でも、もう嫌いになるからっ!」