ぴーんぽーん。

玄関チャイムが鳴るかすかな
音で、私は目を覚ました。

時計を見ると、時刻は1時。
30分だけ眠る予定だったのに
いつのまにか3時間も過ぎている。

とはいえ、奏は試合だし紗綾さんは
仕事、透さんは海外だから私が
玄関に行かなきゃ。

慌ててパジャマからTシャツに
着替えて、階段を降りていく。

「どちらさまですか。」

モニター越しに声をかけながら
画面を見ると、映っているのは
宅配スタッフの人のようだった。

『お荷物を届けに参りましたので
サインと受け取りお願いします。』

そう言われて、私はボールペンと
シャチハタを手に玄関をでた。
宅配スタッフの顔は、帽子が影に
なっていてよく見えない。

サインをしようと
前かがみになった、そのとき。

「...............っ!」

いきなり今まで感じたことのない
ような痛みが後頭部を走り抜けた。
思わず倒れ込んで身悶える私の横に
音をたてて落ちた金属バット。

そんな私を見ながら宅配スタッフは
すっと帽子を上にあげた。

「.........のっちゃん。」

そこにいたのは、凜の幼なじみで
陸上部のエース男子の望だった。

「お前、どんまい。」

走り去る影を追うことも出来ない。