<プロローグ>
電車、まだかな。
私は腕時計と改札の表示板を見比べた。
あと3分。
早く来てほしい。

こんな世界にはもう
存在していたくなんてないから。

私が消えたって、きっと誰も悲しまない。

それどころか、
気付きさえもしないかもしれない。
私のことなんて、
みんなどうでもいいんでしょ。

~まもなく、電車が参ります~

機械的なアナウンスが流れるのと同時に、
遠くに電車の影が見えた。

その影が近づき、
やがてライトが見えてきたとき。

私はあっさりと黄色いラインを
踏み越えて、線路に飛び込んだ。

直前に見上げた空は真っ青で、
私の気持ちを嘲笑うかのように
太陽がきらめいていた。